こんにちは。写真家の石井和宏です。
「ファインダーの中には、どんな風に景色が映っているの?」
「写真ができるまでの、その過程を見てみたい」
そんな何気ない会話をきっかけに、先日、初めての挑戦をしてみました。
POV動画(Point Of View)、いわゆる「主眼映像」の撮影です。
実はこれまで、僕にとってPOV動画は少し縁遠いものでした。
というのも、僕が撮ろうとすると、どうしてもファインダーを覗き込んでしまうので、画面には僕の腕しか映らない、なんてことになりがちだったからです。
「自分にはあまり向かないのかもしれないな」と、どこかで決めつけていた部分もありました。
それに、僕にとって写真を撮るという行為は、いわば「研ぎ澄まされた静寂」の中に身を置くことです。
そこにある光、空気、被写体の雰囲気、それらと自分のイメージや気持ちが重なる瞬間をじっと待つ時間は、とても静かなものです。
集中が深まるほど周りの音は消えていきますが、そこで動画を回し、画角を気にすることは、僕にとっては一種の「ノイズ」になってしまいます。
例えるなら、ピアノの美しい旋律に没頭したいのに、すぐ隣でメトロノームが違うリズムで激しく鳴っているような、そんな落ち着かなさが写真と映像を両方撮るという行為なのです。
特に、光を調整するNDフィルター(レンズにサングラスの様な物をつけて、光の量を調整します)には手こずりました。フィルターを付け替える、その指先のわずかな力だけで、せっかく決めたカメラの角度が動いてしまうからです。
僕の世界では、角度のズレは「たった1°」、横への移動は「わずか1mm」が違和感に繋がります。
そのコンマ単位のこだわりを通すため、三脚は使わず、すべて手持ち。
はたから見れば、かなり無理な体勢で長時間じっとしていました。体力と筋力も結構使います。
「POV動画を普段からやっている人は本当にすごいな」と、改めて尊敬の念を抱かずにはいられません。
それでも、なぜ今回あえて撮ってみたのか。
それは、僕がシャッターを切るその直前、ファインダーの中で流れている「あまりに美しい時間」を、一度お裾分けしたかったからです。
静止画として定着する前の、揺らぎ、溶けていくような光の気配。
今回は、自分なりにだいぶ頑張ってみました。
こちらの動画を、ぜひご覧ください。普段こんな環境下で撮っています。
ここには、僕が格闘した1ミリの執着と、その先にある静かな景色が映っているはずです。
写真の中の静寂と、その裏側にある僕のささやかな格闘。そのギャップを、少しだけ面白がっていただけたら嬉しいです。
とりあえずやってみましたが、やはり「気が散ってしまう」という本音は隠せません笑
これからも、また気が向いた時に、ふらりと挑戦してみようと思います。
ちなみに、ハナアブ?みたいなのも偶然止まってくれました。このアブは人を刺さない益虫みたいです。
こういう瞬間を残すなら、僕はやはり一瞬の気持ちをおさめる写真に残しますね。


